4年目の「日の丸・君が代」強制反対ホットライン・大阪
          
どこまでひどくなるのか!「日の丸・君が代」の強制


 今年の卒・入学式は、教育育委員会と校長がますます「良心の自由」を顧みることなく、露骨な人権侵害を起こすようになっています。「日の丸・君が代」の100%実施だけでは、全然止まっていません。子どもたちや教職員の心の中まで、強制がエスカレートしています。すさまじい「日の丸・君が代」の強制が、学校の民主的な雰囲気を壊し、上意下達の「命令し、それに従う」教育が浸透していっています。そのような状況を反映して、今年で4年目を迎えた「日の丸・君が代」強制反対ホットライン・大阪には、深刻な人権侵害を含む電話相談が寄せられました。いずれも、電話相談だけでなく、弁護士との相談会を持ち、当該の教育委員会や学校への申し入れ・抗議行動を行ってきました。
 文科省の指示や「学習指導要領」の前では、子どもたちと教職員の人権がどれだけ軽んじられているか。教育委員会と校長の指示が「絶対的なもの」になり、どれほど専制体制が敷かれているか。それに従わない者は、「指導力不足教員」や人事考課制度によってどのように切り捨てられようとしているか。今年も開設された全国のホットライン活動とも連携を強めながら、「日の丸・君が代」の強制をはじめとした今の学校現場の実態を学校の外へ広く知らせていき、共感する人々とのネットワークを強めながら抵抗する力をつけていくことが何より大切だと感じています。
 5月16日には、「良心の自由は守られたか?『日の丸・君が代』強制反対ホットライン大阪報告まとめ集会」を開き、今年度の取り組みを報告しあい、今後このようなすさまじい強制に対してどのようにして対抗していくか、討論しました。以下、その場で報告された内容を含めて今年のホットライン・大阪の取り組みを紹介します。


「7点指示」の枚方で起こった人権侵害と市民の勝ち取った成果

不起立の教職員に対して、教頭が2回もマイクで「○○教諭立ちなさい」と命令

 今年枚方では、校長・教頭が血眼になって「7点指示」を実現するために強制を強めました。ある中学校では、卒業式の予行での「君が代」斉唱の際、在日の子どもたちを含む数名が不起立であったことに対して、校長が「座るな!立ちなさい!」と怒鳴りつけました。校長は教職員から抗議されても、最後まで子どもたちへの謝罪を拒み続けました。卒業式当日、この子どもたちは起立しませんでしたが、怒鳴りつけられた子どもたちの人権は侵害されたままです。
 また、別の中学校では、卒業式で「君が代」斉唱の最中、不起立の教員に対して「○○教諭立ちなさい。」と教頭が2度にわたってマイクで命じました。これは、教員個人の人権を著しく侵害する行為で、抗議の取り組みが続けられています。

運動の力で不起立教職員調査を一歩後退させた!

 枚方市教委は、今年度の入学式の「国歌斉唱時の起立状況について(通知)」の調査から「起立しなかった理由」を削除しました。この項目を書くために行っていた不起立の教職員に対する校長の事情聴取も今年度からなくなったようです。昨年度までの「国歌斉唱時に起立しなかった教職員調査」の中では、不起立の教職員の氏名、指示した日時、場面、内容、現認者、当日起立しなかった教職員への再度の起立の指示の有無に加えて、起立しなかった理由が事細かに記載されていました。
 今年1月から、枚方の市民運動とホットライン・大阪は、「7点指示」の撤回と「起立しなかった教職員」調査の違法性を市教委に対して申し入れました。3月末には、この調査は枚方市個人情報保護条例に違反するとして、枚方の30名を超える市民が、住民監査請求を行いました。粘り強い地元枚方での住民監査請求や市教委への猛威入れ行動、それと結びついた全国からの抗議メールやFAX−−−これらが、強硬な枚方市教委へ打撃を与え、「起立しなかった理由」を調査対象から外さざるをえなかったのでしょう。全国的には批判を全く無視して強制を強める教育委員会の横暴が目立つ中で、今回の「理由」削除は、枚方の市民運動の貴重な成果と言えるでしょう。
 枚方で市民運動をしている方は次のようなメッセージを発しておられます。

 「理由」の項目は、住民監査請求の最大の眼目となるものでした。市教委は、「理由」の項目を削れば「内心の自由」を侵害してはいない。ただの職務状況調査だとでも言い逃れしたいのでしょうが、起立、不起立が個人の思想、良心、信仰等の自由にかかわる問題である以上、「氏名報告」それじたいが不当な「思想調査」であり、国家に先立つ基本的人権の侵害であることは間違いありません。
 けれども、「起立しなかった(着席した)理由」を聞くという行為による威圧もしくは威嚇を通じた圧迫、個々の教職員への精神的打撃という点を想像すれば、たった1項目ではあっても削除させたということは価値ある一歩であっただろうと思います。
 草木をなぎ倒すように我がもの顔で猪突猛進してきた市教委の横暴に待ったをかけたことは、特に「日の丸・君が代」問題では重要です。7点指示そのものの撤回をめざして手をゆるめることなく頑張りましょう。


「今後は慎重に対応したい」(八尾市教委)
市会議員の「君が代」授業参観問題で八尾市教委を追及


 3月7日、八尾市の三宅市議が、市教委に圧力を加え、同市立八尾小学校で「君が代」の授業参観を行いました。翌日の産経新聞は、「君が代」授業公開を他の地域でも積極的に進めるための突破口にしようと、大々的に報道しました。(詳しくは「良心と抵抗」第16号)
 すぐさま、八尾の様々な市民運動とホットライン・大阪が、八尾市教委に対して申し入れを行いました。その中で八尾市教委は、これまでから「議員への資料・情報提供は、どの議員にも誠意を持って可能な限り対応」しており、今回のことも「情報提供の一環」と、全く反省する姿勢を見せませんでした。しかし、議会の正規の調査活動には、議会の手続きが必要となり、今回の三宅議員の参観は正規の調査ではないことが明らかになりました。保護者にも一切知らされていませんでした。八尾市教委は、「非公式」「見るだけで案内した」「垣間見ただけ」「学校のトイレや朝の読書活動の見学と同じ」など、極めて無責任な発言に終始しました。しかし「垣間見ただめ」「非公式の見学」が、翌日には産経新聞の全国面に大々的に登場し、授業の進め方から子どもたちの発言まで報道され、授業者や子どもたちの人権は踏みにじられる結果になったのです。三宅市議が「教育再生地方議員百名と市民の会」幹事であることから、このように政治利用されることは十分予想されたことで、八尾市教委の責任は極めて重いといわざるをえません。八尾市教委は、苦し紛れに「今回のことには反対する人も多いと分かった。今後は慎重に対応したい。」と返答せざるをえませんでした。話し合い後、参加した市民は、今後八尾市が「君が代」授業参観を二度と許可しないように監視を強めると同時に、当該の八尾市立八尾小学校長に対しても、抗議の申し入れをすることを確認しました。

                         申入書
                                            2003年4月21日
八尾市教育委員会                       
教育長 森 卓 様
                        天皇制の持ちこみに反対する八尾市民の会
           、             戦争と差別を考える東部大阪実行委員会
                         憲法を生かす会・八尾
                         八尾市在住 市民
                        「日の丸」「君が代」強制反対ホットライン・大阪

                         申 入 書

 貴委員会におかれては、日頃より平和教育、「同和」教育のとりくみを堆進され敬意を表するものです。
 さて、2003年3月8日付けの「君が代授業を公開という産経新聞記事は私たちに大きな驚きを与えるものでした。その記事の内容が全国的に見ても特異な事象であったからです。
「参観」と称して市教委幹部を伴い八尾小学杖へ行った三宅博市議は「大阪の教育を正す会(以下正す会)」および「日本会議につらなる人物です。「正す会」は活動方針として「小学校での国歌指導の徹底」をあげて運動をしている政治団体であり、八尾市議会文教産業委員会の一委員である三宅市議の要求を断ることなく、八尾小の授業参観を許可した八尾市教委および小川政昭八尾小学枚長は、「正す会」の運動に手を貸した行為をしたことに他なりません。教育基本法第10条の観点からも今回の八尾市教委、小川八尾小校長の行為は見逃すことが出ません。 以上の点から今回の貴委員会のとった行為の重大性を認識され、4月30日までに私たちとの話し合いに誠意を持って応じられるよう申し入れます。

                         記

1.なぜ一文教産業委員である三宅博市議の「参観」要求に応じたのか。

2.今回の「参観を、市教委は三宅市議への「資料、情報の提供」といっているが、三宅市議の「参観」は八尾市議会の議会活動とは無縁の彼のつらなる政治団体の活動の一環からなされたものである。八尾市教委はどう責任をとるのか。

3.その他、上記1,2に関連する事項


子どもたちに歌うことを強要する管理職・教員
高槻市の当該中学へホットラインが公開質問と抗議の申し入れ


 高槻市のある中学校の保護者から寄せられた相談によると、高槻市では国旗国歌法が制定されてから毎年、校長名で「卒業式・入学式における国旗・国歌について」なる文章が子どもたちに配布されていました。その文章には、「『学校において我が国の国旗と国歌の意義を理解させ、これを尊重する態度を育てる。』と前に述べた根本的基準(学習指導要領)に定められています。それに従い、私たち教職員は君たちに国旗・国歌を尊重するよう指導します。」「オリンピックやスポーツの国際的な試合で、・・・国旗掲揚となると観客も選手も全員が起立して旗を見つめます。これが国際的なマナーといえるでしょう。」とあり、子どもたちへ起立・斉唱を強制する内容です。法制化直後に出された文章には、「君たちの『内心の自由』は大切にするよう心がけたいと思います。」の一文があり、子どもたちの人権に対する配慮がまだ見られましたが、今年の文章では削除され、一方的な強制を迫るものとなっています。
 このようなプリントに対して保護者から抗議が起こった学校では、卒業式予行での「君が代」斉唱の際、起立しなかった子どもたちに対して教員が「座っても良いけど、他の歌のところで座っていたらさぼりと思われるで。」と圧力を加えました。その子は、家に帰ってからも「ものすごく気分が悪かった」と母親に語っています。このような事態に対して、高槻市民とホットラインで、当該学校長に公開質問と申し入れ行動を行いました。校長からは、木で鼻をくくったような回答しか返ってこず、子どもたちへの人権感覚の欠如を感じざるをえませんでした。
 また、高槻市では、子どもたちに対して「良心の自由」があり、「歌わない自由、起立しない自由、退席する自由」のあることを事前に説明するのではなく、「君たちも胸を張って歌ってほしい」と起立・斉唱を迫る事前説明が公然と増えてきました。(この点については、別項の高槻のホットライン活動報告を見てください。) 


大阪でも強まる「君が代」ピアノ伴奏の圧力

 教員へのピアノ伴奏の強制は、枚方や東京など一部地域で行われているのではありませんでした。実際は「国歌斉唱」が式次第に入り、「君が代」斉唱を行うようになったほとんどの学校で、次の攻撃として教員への「君が代」ピアノ伴奏の強制が始まっていたのです。今年、大阪府下の音楽専科の教員から「君が代」ピアノ伴奏を強制されているとの相談を受けました。ある音楽専科教員は、校長から「来年音楽専科が出来るかどうかは、君が代を指導し、しかも子どもが大きな声で歌えるように指導できるかどうかできめる」「(君が代指導が)いやだという気持ちが消えないうちは専科をさせられない」、さらに「そういう要請があったことを秘密に出来るかどうかでもきまる」と迫られました。教員の「思想・良心の自由」を全く無視した驚くべき強制です。管理職は、人事権を悪用し音楽専科教員にピアノ伴奏の強制を「秘密」にさせ、職場の中で孤立させることで、命令に従わせようとしているのです。
 このようなケースは、氷山の一角にすぎないのではないでしょうか。校長室の密室の中で音楽専科教員が追いつめられ、人権が奪われている実態は、まだまだ明らかになっていません。卒・入学式で「君が代」をピアノ伴奏すべき義務はどこにもありません。どこにも法的根拠がないことが、校長の権限の中で人権を無視する形で推し進められています。今後、校長室の密室の中で起こる人権侵害を明るみに出し、ピアノ伴奏を強制される教員の人権をどのようにして守っていくのか、大きな宿題を残すことになりました。